ジノ・ダビドフに想いを馳せて

本格的な梅雨入りのようですね。これからは紫陽花の季節でしょうか。季節の変わり目なので皆さまにおかれましてもご自愛くだされば幸いです。

過日、幸運にもジノ・ダヴィドフの名著「ザ・コネスールズ・ブック・オブ・ザ・シガー」という書籍を手にすることが出来ました。英訳された1969年の初版本です。1984年に増版されていたようなので、それが届くのだろうと思っていたところ「初版」が手元に届いたことに少し驚き、大いに喜びました。

ボックスを模した表紙
ボックスを模した表紙

1969年にニューヨークで出版されていますが、1962年に米国の対キューバ禁輸措置が発効しているので、おそらく米国内にまだハバナ・シガーが残っていたであろう時期だと思います。

表紙を開けるとシガーがプリントされてボックスを開けたような様子に
表紙を開けるとシガーがプリントされてボックスを開けたような様子に
初版
初版

書籍の構成はパート1「スモーカーのノウハウ」、パート2「シガーを選ぶ」、パート3「シガーの保管」、パート4「シガーにまつわる著名人」という構成で92ページという内容です。

ハバナシガーの紹介ではラ・グロリア・クバーナが大きく取り上げられていました
ハバナシガーの紹介ではラ・グロリア・クバーナが大きく取り上げられていました

これら本編の前には「前書き」としてタバコ稼業のダヴィドフ家がキエフからスイスに移り住んだこと、そして20歳になったジノが「大金は持たせられないが、上手く使うと黄金にも匹敵する」父からの紹介状を受け取りブエノス・アイレスで過ごしたこと、ブラジルのタバコ農家で多くを学び、キューバへ向かうことを勧められ、そのキューバでPuroを見つけたという経緯などが書かれており、本編も読み応えがありましたが、個人的にはこの「前書き」に興味を抱きました。

本編では執筆された当時の時代背景が含まれているので、タイムスリップしたような面白さがありました。古書の醍醐味はこのタイムスリップではないでしょうか。そして著者との「時代を超えた」対話も醍醐味ですね。本編の内容については主に初歩的なことが書かれていました。

最終的にはキューバに接収されたキューバン・ダヴィドフ、いつかは味わってみたいものです。
コイーバとキューバン・ダヴィドフ
以下は憶測の内容となることをご承知いただけますと幸いです。

コイーバは革命後の1966年に設立されたブランドでハバノスのフラッグシップとなるブランドです。1984年に一般に向けて3ヴィトラが流通するようになり、1989年に先述の3ヴィトラに加えてクラシック・レンジ(リネア・クラシコ)が公開されています。ご存知の通り、一般に流通する以前(1966~1983)は外交用のシガーという役割を担っていました。

キューバン・ダヴィドフは革命後の1969年に設立され1991年に姿を消し、1992年には全てのストックが流通に乗り一般に渡ってしまっています。

cohiba:davidoff
コイーバとキューバン・ダヴィドフ

少し見づらいかもしれませんが、上の年表は緑がコイーバで赤がキューバン・ダヴィドフです。

コイーバは左から外交用としての期間、3ヴィトラが流通した期間、そしてクラシックレンジ(リネア・クラシコ)を含めた現在までの期間というように分けています。この期間の中でキューバン・ダヴィドフがいつ存在していたのかがわかるように赤で示しました。

年表で見ると、コイーバの外交用としての期間と3ヴィトラのみの期間がダヴィドフに重なっています。そしてコイーバのクラシック・レンジ(リネア・クラシコ)の流通、本格的にコイーバが公開されるようになり始めるとダヴィドフの時代は接収という結果をもって終えることとなるわけです。せっかく買い取った権利を接収されてしまうとは、たまったものではないはずです。

タバコ畑は限られており、主要産業として葉巻の輸出に力を入れている側としてはダヴィドフの畑を取り上げざるを得なかったのでしょう。

ここから大胆な憶測となりますが、「ダヴィドフはキューバの外交用のブランドを買い取っていた」のかもしれません。コイーバが外交用をスタートしてからキューバン・ダヴィドフが現れ、コイーバのクラシック・レンジ(リネア・クラシコ)が本格的になると同時にキューバン・ダヴィドフが姿を消しています。

コイーバを前面に押し出すにしたがってダヴィドフの存在が邪魔になったキューバ側がダヴィドフを接収という形で取り繕ったのかもしれませんね。

ちなみにコイーバが外交用として存在していた時のリングはこちらです。

一般的な外交用のリング
一般的な外交用リング
特別な機会のための外交用リング
特別な機会のための外交用リング

そしてキューバン・ダヴィドフのリングはこちらです。

キューバン・ダヴィドフ
キューバン・ダヴィドフ

コイーバは他ブランドより発酵回数が多いとされていますが、それもキューバン・ダヴィドフとの差別化のため、あるいはブレンダーが最初に考えていた意向がようやく叶った結果なのかも。

あくまでも個人的な憶測なのでフィクションと捉えていただきたい次第です。ただ、このように想像してみることも面白いものですね。

コメントを残す